シティポップだけじゃない 骨太の台湾ロックも楽しんで
台湾のシティポップ系のアーティストへの注目も集まっていますが、ロックも、もちろん人気です。
活躍の幅も広く、日本を始め海外でのフェス参加やライブを行うバンドもいます。
今回は、その中でも日本で人気のある、骨太な音を鳴らすバンドをご紹介します。
熱い心と優しさを持つ台湾のヒーロー Fire. EX(滅火器)
結成20年を越えるベテランバンドで、日本にも多くのファンを持つ、Fire. EX(滅火器)。
MONO EYESや10FEETなどの日本のバンドとも共演し、東北ライブハウス大作戦に参加しています。
東日本大震災後の東北も訪れ、今年の3月11日には「希望の明日」を発表。
日本と台湾の交流を続けている彼らには、日本から令和3年度外務大臣賞が贈られました。
「希望の明日」
2021年3月11日14:46に配信開始。
コロナ禍で会えない中、お互いを想う合うような歌詞は、日本語も入る心温まる楽曲です。
Fire. EX(滅火器)は、自分たちの鳴らす音で、社会や政治とも関わっていく姿勢を持つバンドです。
2014年に台湾で起こったひまわり学生運動の応援歌として「島嶼天光」(Island's Sunrise)を制作。
この曲は、第26回金曲奨で最佳年度歌曲(最優秀歌曲賞)を受賞しています。
「島嶼天光」(Island's Sunrise)
今年の8月21日に行われた、第32回金曲奨の授賞式ではライブパフォーマンスを披露しています。
「繼續向前行+長途夜車」
台湾語も交えた骨太オルタナバンド 茄子蛋(EggPlantEgg)
2012年に結成の3ピースバンド。
骨太のサウンドと共に、3人のコーラスも美しく力強いのが魅力だなと思っています。
「愛情你比我想的閣較偉大」
今年4月に台湾で公開された映画『當男人戀愛時』の主題歌で、台湾語で歌われています。
なお、『當男人戀愛時』は現在、NETFLIXで観ることができます。(邦題は、『君が最後の初恋』)
茄子蛋(EggPlantEgg)は、アルバム『卡通人物』(Cartoon Character)で、
第29回金曲奨 最佳台語專輯獎 (台湾語アルバム賞)と最佳新人獎 (新人賞)を獲得しています。
「浪子回頭 Back Here Again」
アルバム『卡通人物』(Cartoon Character)収録曲。
このコラムを書くのにあたり、台湾人の友人に茄子蛋(EggPlantEgg)について、LINEでやり取りをした際、
‟茄子蛋(EggPlantEgg)の音楽には、70年代~80年代の雰囲気が漂っている。
意地っ張りで、恋愛も下手な男性のイメージがある。”
と言っていたことが、とても印象に残っています。
酒場でたばこを吸う男性が登場するシーンをMVで観ると、改めて友人の言葉が頭に浮かび、不器用で無骨な感じの男性が、少し微笑ましくも思えてしまいます。
「浪流連 Waves Wandering」
2019年の第30回金曲奨 年度歌曲獎 (楽曲賞)にノミネートされた楽曲です。
台湾語でロックを歌うこと
滅火器(Fire. EX)も台湾語を交えて歌いますし、茄子蛋(EggPlantEgg)も台湾語で歌います。
台湾で現在、主に使われている言語は中国語(台湾華語)です。
古くから台湾で使われている台湾語で歌う理由は、アーティストによってさまざまですが、
やはり‟台湾語ロック“は、80年代後半から始まった台湾インディーズとの関わりが、とても深いです。
台湾は、1949年~1987年まで戒厳令が敷かれ、台湾語での創作を含め言論の制約がありました。
戒厳令解除の間近から解かれた後、台湾人であるという意識を持って、台湾語でロックを歌う現象が当時の学生や若者の間に起こり、その動きが社会や文化、政治へと繋がっていきます。
台湾では、伍百など50歳を超えたレジェンド級アーティストが、今も台湾語でロックを歌い、多くの人に愛されています。
9月に遠隔対バンが予定されている、拍謝少年(Sorry Youth)
ここまで、台湾語も使用するバンドを2組紹介しましたが、最後にもう一組ご紹介します。
拍謝少年(Sorry Youth)は、台湾・高雄出身の3ピースバンドで、日本のみならず、韓国やカナダのフェスにも参加しています。
ノイジーでエモな雰囲気もありながらも、アルバムの枚数を重ねるごとに、エモさの中に深みや音の広がりが増すので、常に新しい発見を与えてくれるバンドだなと思っています。
「山盟 Vow of Mountain」
「"踅夜市" Live Session @基隆廟口夜市」
どちらも、今年の8月11日に日本盤がリリースされた、3rdアルバム『Bad Times, Good Times(歹勢好勢)』の収録曲です。
「踅夜市」のMVの字幕にも出ているように、基隆は港があり、日本統治時代は多くの日本人が、最初に上陸した場所です。
市場や廟の風景を見ていると、一日も早く安心して台湾へ行ける日が来ることを願うばかりです。
さて、拍謝少年(Sorry Youth)も参加するライブイベント "Call Out Music" が、9月24日(金)が、開催されます。
このイベントは、2つの国の会場で有観客ライブを実施しながら、各会場のライブを生配信するものです。
日本の会場は、東京・渋谷にあるライブハウスduo MUSIC EXCHANGEで、出演アーティストは、the band apart。
台湾からは、拍謝少年(Sorry Youth)が出演をします。
duo MUSIC EXCHANGEでライブを楽しむこともできますし、配信チケットも販売されています。
詳しくは、公演特設サイトをご確認ください。
最後に。第32回金曲奨について
8月21日に、第32回金曲奨授賞式が行われました。
ノミネートされたアーティストたちの華やかな衣装とライブパフォーマンスは圧巻。
また、言葉は分からずとも、受賞者がスピーチする様子からは、この賞がいかに台湾の音楽シーンで重要であるかが分かります。
このコラムでも紹介した、落日飛車(Sunset Rollercoaster)が、最佳樂團獎 (バンド賞)を。
春麵樂隊(ChuNoodle)が、最佳客語專輯獎(客家語アルバム賞)を受賞しました。
【関連記事】金曲奨から考える台湾の音楽事情
【関連記事】春麵樂隊(ChuNoodle)と日本の童謡が繋ぐ日台の歴史
授賞式の様子は、公式YouTubeチャンネルで見ることが出来ますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
石井由紀子(いしいゆきこ)
ラジオパーソナリティ、ナレーター。
無類の音楽好きで、国内外問わず様々な音楽を聴く。台湾人の友人と一緒に仕事をしたことを機に、台湾音楽の魅力に惹きこまれ、もっと深く知るために日々勉強中。ミュージックソムリエの資格を持つ。
Twitter @YukikoIshii928