春麵樂隊(ChuNoodle)と日本の童謡が繋ぐ日台の歴史

Our Favorite City ニッポン × タイワン オンガクカクメイ

2021/08/10 19:00

Follow

新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となった、第32回金曲奨(Golden Melody Award 以下、金曲奨と表記)授賞式が、8月21日(土)に決定しました。

なお、授賞式はオンラインとリアル(‟線上+實體“と公式Twitterで記載)で開催するようです。

このコラムでも最初に触れた金曲奨ですが、今回はノミネートされているアーティストと、日本の童謡についてお話しようと思います。

関連記事:金曲奨から考える台湾の音楽事情


ポップミュージックと童謡、ちょっと意外な組み合わせですが、そこから日本との関係も見えきます。



客家(はっか)語アーティスト「春麵樂隊(ChuNoodle)」


金曲奨の賞は、音楽ジャンルではなく、歌われている言語、中国語、台湾語、客家語、原住民語で区分されています。

客家語は、客家人と呼ばれる人たちの使用する言語です。

彼らは、清王朝時代に中国大陸から台湾に渡ってきた人々をルーツに持っています。


春麵樂隊(ChuNoodle)は、客家語で歌うアーティストとして、アルバム『到底』が、第32回 金曲奨 最佳客語專輯獎 (客家語アルバム賞)と、最佳客語歌手獎 (客家語シンガー賞)にノミネートされています。

ジャズやラテンの要素も入っているクロスオーバーな楽曲もあれば、アコースティックギターの優しい音色が響く楽曲など、上質なポップミュージックを発表しています。


バンドが、ボーカル、ギター、クラリネット、バスクラリネットで編成されているのも、彼らの特徴です。

クラリネットの柔らかな音色には、凛とした美しさがあり、ボーカル賴予喬(LAI Yu-Chiao)の柔らかく表情豊かな歌声に、心が癒されます。

親しみや温かさもありながらも、気品が漂う。聴いていて本当に心地が良い音楽だと思います。


「爬山」アルバム『到底』収録



ビデオでも山に登る人々の姿がアニメーションになっていますが、” 爬山”は、登山を意味しています。

台湾アーティストは、比較的YouTubeに自身の楽曲に関する制作メッセージなどを出すのですが、この曲に関しても山の神様に向けて、人生の問いかけのような言葉が綴られています。



美しさを感じるポップミュージックと童謡「はとぽっぽ」


アルバム『到底』の収録曲の中で、私が最も驚いたのが「以為」と言う曲です。

間奏に、童謡「はとぽっぽ」のワンフレーズが日本語で入っています。


「以為」アルバム『到底』収録



「以為」の制作背景や意図は、残念ながら彼らのFacebookなどから見つけることができませんでしたが、

最初に聴いた時には、日本の童謡が間奏に入っていることに耳を疑い、不思議な気持ちになりました。


歴史を遡ると、台湾は1895年から第二次世界大戦が終わる1945年まで、日本の統治下にありました。

この間は、”日本”だったため教育に関しても日本と同じものが採用されています。

音楽には唱歌が採用され、多くの日本人との交流があったことから、唱歌や童謡が台湾で歌われるようになりました。

当時を経験している人であれば歌えるかもしれませんが、1945年から70年以上が経過している2019年に発表した楽曲で、童謡の一部が歌われているということに驚きました。


台湾人の友人に、日本の童謡や唱歌で、今でも歌われているものがあるかを尋ねると、

ぱっと出てきただけでも、「ぞうさん」「ちょうちょ」(なぜか「小蜜蜂」という蜂の歌になっている)「あめふり」などを挙げてくれました。

今は日本語ではないけれど、これらの曲は台湾で歌われ続けているようです。


少し話は逸れますが、台湾映画界の巨匠、侯孝賢監督の『冬冬の夏休み』のワンシーンで、学校で「仰げば尊し」が歌われています。

こちらも、最近まで台湾の学校でも良く歌われていた定番ソングで、台湾では「青春校樹」と呼ばれているそうです。


シネマトゥデイ公式チャンネルより「映画『冬冬(トントン)の夏休み』『恋恋風塵(れんれんふうじん)』予告編」



10数年前に台湾に行くと、日本語の流暢な高齢者の方が街で話しかけてくれることがありました。

日本統治時代に子ども時代を過ごした方たちで、好意的に昔話をしてくれました。

今もご存命でしたら、80歳後半以上の方なので、最近台湾に行っても街でバッタリ会うことは少ないかと思います。

最近は、英語の方が台湾でも良く通じると、個人的には感じています。

それでも童謡は歌い継がれ、2019年に発表したアルバムにもワンフレーズが入っていることに、驚きと共に親しみや台湾の人たちの温かさを感じています。



バンド名の由来と温故知新な雰囲気


春麵樂隊の名前の由来は、季節の変わり目に吹くそよ風、春に降る優しい雨にちなんでいるそうです。

これは推測になるのですが、日本でも”春雨”というと優しい雨を思い浮かべます。

同じ文化を共有していることもあってか、ネーミングの意図やイメージが汲み取れるなと思っています。

また、聴いていて心地が良く、穏やかな空気に包み込まれるように感じるのは、バンド名とリンクしているように感じています。


バンド編成のクラリネットやバスクラリネットは、クラシック音楽の影響を受けているそうです。

クラシック音楽と、自身のルーツの言語、そして現代のポップミュージック、それらを融合して出来ているが、春麵樂隊(ChuNoodle)の音楽です。

童謡「はとぽっぽ」を間奏に、日本語でさらりと入れて現代の感覚にも上手くマッチさせていることに、このバンドの凄さを感じています。



最初にも紹介しましたが、第32回金曲奨の発表は、8月21日。

最佳客語專輯獎 (客家語アルバム賞)と、最佳客語歌手獎 (客家語シンガー賞)の受賞者も気になるところです。

ちなみに、春麵樂隊(ChuNoodle)の他に、最佳客語專輯獎 (客家語アルバム賞)にノミネートされているのは、

Siau-lu Khah-lah(少女卡拉)「Khak-lah Thien-thoì(卡拉電台)」、「那三年」謝宇威(シエ・ユーウェイ)、「當太陽升起時」羅文裕(WING)、「阿民」九連真人(ジョウリエンチェンレン)です。

どのアルバムも非常に個性があり魅力的です。


Spotifyで、最佳客語專輯獎 (客家語アルバム賞)のノミネート作品を聴けるプレイリストを公開していますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。










石井由紀子(いしいゆきこ)

ラジオパーソナリティ、ナレーター。
無類の音楽好きで、国内外問わず様々な音楽を聴く。台湾人の友人と一緒に仕事をしたことを機に、台湾音楽の魅力に惹きこまれ、もっと深く知るために日々勉強中。ミュージックソムリエの資格を持つ。

 Twitter @YukikoIshii928


ページを報告する

コピーしました

コピーしました