大比良瑞希×鄭宜農(Enno Cheng) 日台スペシャル対談 【前編】

Our Favorite City ニッポン × タイワン オンガクカクメイ

2021/10/21 20:30

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今回のスペシャル対談は、

台湾から鄭宜農(Enno Cheng)、日本から大比良瑞希に参加してもらいました。


いずれもシンガーソングライターとして、それぞれの国で高い評価を得ており、

そして活動そのものがユニークという点においても共通しています。

今回、2人はまったくの初対面ですが、

おそらくお互いのことで共感できるんじゃないかな?という期待を込めて対談を依頼しました。


さて、どうなりましたでしょうか...



取材・文 / 行 達也




─── イーノンさんにお聞きします。

大比良さんの音楽を聴かれましたか?もし聴いたのなら、その印象を聞かせてください。


鄭宜農(Enno Cheng) 昨日ずっと大比良さんの音楽を聴いていました。

その中でも一番好きな曲は、「アロエの花」という曲です。

この曲のギターのイントロのフレーズが特に好きで、ずっと記憶に残っています。

とてもフックになっていると思います。リズムも明るいですよね。

曲を聴いたときに、日本の景色を思い出しました。


大比良瑞希 | アロエの花 (Official Music Video)



─ 日本の風景を思い出したとおっしゃっていますが、イーノンさんは日本に来たことがあるんですか?


鄭宜農 コロナになる前は、一年に2回くらい日本に遊びに行ってました。

今は行けないから、大比良さんの音楽を聴いて、また日本に行きたくなりました。



─ 日本のどういう景色が浮かんだんですか?


鄭宜農 私自身、色に対してとても敏感なのですが、毎回、日本に来ると、青と緑に鮮やかさを感じています。

台湾では、なかなか、この2色にそんな鮮やかさを感じられないので、日本特有な色なんだなと思います。

大比良さんの曲を聴いているとすぐにそんなことを思い浮かべました。


他にも、日本のデザインの本や、カラーカットなどをいつも研究しているのですが、

日本で見ていた色は、原色ではなくて中間色、という印象です。

大比良さんの曲を聴いていると、そんな鮮やかな中間色である日本の空を思い出しました。

その色が好きで、曲も耳に残りました。

同じく音楽を作る人として、影響を受けますね。


大比良瑞希 嬉しいです。ありがとうございます。



─ 大比良さんはイーノンさんの音楽いかがですか?


大比良瑞希 私も、このお話をいただいてから、イーノンさんの音楽をたくさん聴きました。

心にスッと入ってくるというか、丁寧な気持ちになれる曲ばかりで、単純にとても好きになり、知れて嬉しい気持ちになりました。

なんというか、声はすごく優しくて琴線に届いてくるような温度で、

それに対してアレンジは、とても優しく包んでいく曲もあれば、毒々しさもあるような尖ったリフを用いている曲もあって、そのバランスが、私の好きなツボに刺さってきました。

ルーツやどんなジャンルの音楽を聞いてきたのか、も気になりました。

MVやジャケットも好きなタッチなので、いつもどんなところからインスピレーションを受けているのか、興味を持ちました。


鄭宜農Enno Cheng-〈囡仔汗 Baby Sweat〉




鄭宜農 小さい頃からロックを一番よく聴いていましたが、両親が割と変わっていて。

いわゆる国内のメジャーなポップスではなくて、家では長渕剛さんの曲が毎日流れていて、

母親は森山直太朗さんも好きでした。

小さい頃は山奥に住んでいましたが、山道を歩いて帰りながらこういう音楽を聴いてきたんです。


同じ頃、ちょうど海外の文化が台湾に大量に入ってきた時期でもあって、

私は台湾の音楽より日本やヨーロッパ、アメリカの音楽を聴いていました。

アメリカだとNIRVANAやメタリカを聴いていましたね。

その影響もあって、自分の音楽性にはアコースティックな表現がある一方で、すごくラウドな表現もあったりします。


家族の影響で、大人になっても一番好きな歌手は宇多田ヒカルです。

今は彼女の音楽を聴きながら、エミネムも聴いています。

色々な音楽が自分のルーツにあるので、今も自分の音楽のジャンルやコンセプトは、なかなか決められないです。

新しい作品を発表するたびに、その一回限りのコンセプトを決めるようにしています。



─ なるほど


大比良瑞希 面白いですね!

少し懐かしい感じもしてたような感じがあったり、映画の中にいるような感じがあったりしていたので、

宇多田ヒカルさんのバランス感や、日本からも影響を受けているのが少しわかるような気がしました。



─ イーノンさんは、一時期ギターに集中して練習、トレーニングをしていたと思いますが、なぜ活動を中止してまで、特訓しようと思ったのですか?

イーノンさんも大比良さんも、「ギター」というのが軸になっていますよね?


鄭宜農 ギターは"縁"だと思っています。 というのも最初に音楽を始めたきっかけが、ギターなんです。

元々ルームメイトがギターを弾いていました。

その子のギターを借りて、習い始めたのですが、結局私の方がルームメイトよりも長く続けました。

ギターを弾き始めて、いくつかコードを勉強したら、野心がでてきて、曲を作ろう!となったんです。

その時に作った曲は今はすごく恥ずかしくて聴けないですが(笑)。

大学から、本格的にギターをメインに創作を始めました。

バンドを組んだり、新しいアプローチも試みました。

例えば、ピアノで曲を作ったり、ビートを最初に作ってから曲を作ったり、シンセを使って曲を作ったり、色々試していましたが、とにかくギターは毎日弾いていました。

ギターは私にとって、長い時間ずっと一緒にいて、慣れすぎて、一度別れて、また復縁して。

復縁したら、「なるほど、あなたはそういう人だ」と新しい発見があって。

楽器に対して、また新しい考えがでてくる、そんな存在だと思っています。



─ エレキギターですか?


鄭宜農 全部。アコースティックも含めて全部です。



─ なるほど。


鄭宜農 それでもまだ足りないなと思う部分もあるので、

さらに学んで、ギターを弾き続けています。





というわけで前編はここまで。

主にイーノンさんのルーツを中心に語っていただきました。

イーノンさんの日本への愛情が音楽だけでなく、色彩にまで及んでいたのは驚きでした。

日本にいるだけだと、まったく気付かないことが海外の人の目線でわかることがあるんですね。


後半はどんな話が聞けるでしょうか?

続きをお楽しみに!




YouTubeチャンネル「SAYULOG」では、2組のスペシャルトークを動画でお届け!

ぜひチェックしてください!





大比良瑞希

東京出身のシンガーソングライター。

2015年、ミニアルバム「LIP NOISE」のリリースでソロ活動をスタート。

クールネスとパッショネイトが交錯するスモーキーな歌声と、エレキギターを爪引きながら歌うスタイルは、明るくも物憂げな唯一無二の世界観を醸し出し、ソウルフルかつオルタナティヴにな新時代のシティ・ポップを紡ぐサブスクリプション・ストリーミング時代を体現する次世代型シンガーソングライターとして注目を集めている。

Bitfanにてファンコミュニティーサイト"mimitometo"を開設、日々会員向けの限定コンテンツも更新中。





鄭宜農(Enno Cheng)

歌手、女優、作家など多岐にわたって活動。

『海王星』『Pluto』『天王星へ』など、個人として数々のアルバムをリリースした他、バンド「Chocolate Tiger」として活動しながら、大象體操(ELEPHANT GYM)と落日飛車(Sunset Rollercoaster)のメンバーと「Felix Felicis(小福氣)」というバンドを結成し、他のアーティスト共も精力的にコラボレーションを重ねている。

アメリカ、中国、香港、マレーシアを回る世界ツアーを開催したり、海外の音楽フェスにも多数出演し、今年はアメリカのSXSWで山々に囲まれた中でのパフォーマンスで海外から注目を集めた。










行 達也

株式会社SKIYAKI、 Our Favorite City 編集スタッフ
台湾インディーズは初心者ですが、夜市には行ったことあります。もっと食べたいです。



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