TOTALFAT×滅火器(Fire EX.) 日台スペシャル対談 【後編】
今回の日台スペシャル対談はFire EX.とTOTALFATの後編となります。
前編では、お互いのバンドとの出会いのきっかけから、
その後の交流について語ってもらいました。
今回はどんな方向に話が進むのでしょうか?
取材・文 / 行 達也
─── 今、ShunさんからFire EX.のルーツについて語っていただいたのですが、
お互いのルーツについて話したりすることあるんですか?
Shun(TOTALFAT) そうですね、オレとサムは会うとルーツの話とかになりますね。
あと、これからの話とか...台湾って日本と社会的にも事情が違うから、
お互いその辺りは「どう思ってるの?」とかポリティカルな部分含めて、
オレはFire EX.がどういう道のりを歩んできたか、ものすごく興味があるから聞いたりします。
─── 日本と台湾のバンドは政治的にも歴史的にも音楽市場的にも異なると思いますが、FireEX.さんはそれについてどうお考えですか?
Sam(FireEX.) 僕らの日本の音楽への熟知は歴史と大きく関係しています。
1990年代は日本の文化が大量に台湾へ入ってきた時代だったので。
おそらく僕らは隣の国同志でもあるので、僕らの感じる美学的な部分も近しいところもあるのかもしれません。
日本の音楽が台湾へ与えた影響は非常に深いものである(=大きい)と感じています。
僕らが日本の音楽産業を見て思うこと、それは、日本の音楽産業が僕らよりもずっといち早く発展し始め、その後も長い間発展し続けてきたということです。
というのも、政治的な状況から、台湾では長い年月(文化や言論などにおける)戒厳を受けていた時代があったんですよね。
それゆえ、台湾の文化面の発展のスタートは少し遅れて始まったんです。
台湾人も本質としては日本人と同じように音楽や音楽を作ることって、とても好きだったんだと、僕は思うんですね。
音楽を楽しむスタイルも、日本人ととても近しいんじゃないかと。
ただ、台湾の音楽市場の規模は、日本と比べて未だに差があると感じています。
例えば、日本のバンドは非常に大きな音楽市場で活動ができるので、
音楽で生活を築けているバンドも多いと感じていますが、
台湾では相対的に見てそこまで多くないのが現状です。
なので、僕は日本と台湾のミュージシャンが共により深く交流し合うことが必要だと思います。
そうした交流を通じて、共に様々なことを学び、吸収し合える。
それだけでもすでに、十分に幸せなことであると思うんです。
台湾も、日本のミュージシャンのみなさんが台湾を訪れ、
そして絶えることなく何度も素晴らしいライブを魅せてくれるために台湾へやって来てくれることを心から歓迎していると僕は思っています。
台湾も皆、そうした日本のミュージシャンたちのことを好きでいてくれていると思います。
滅火器 Fire EX. - The Light feat.後藤 正文 (Official Music Video)
─── なるほど。ありがとうございます。
次にTOTALFATにお聞きしたいのですが、コロナが我々の生活を脅かすようになってもう1年以上経ってしまいましたが、
初期の頃に「バンドとして、こういうことをやっていこう」と考えた思いや行動って、その後いかがでしょうか?
モチベーション高く続けられているのか、もしくは考え方すら変わってしまったのか。
Shun ライヴが出来なくなって最初の1年目は、何か動かなきゃってことでとにかくたくさん曲を書きまくってリリースして、
そこで自分たちにとってもちゃんとアウトプットが出来る期間にはなったので良かったのと、
そこからまたライヴが配信だったり、人数制限があったりと制約こそあったけど、
何とかそこまでの一連の流れが坂を登っている感じがして良かったんです。
一つ一つをクリアして新しい時代に向けて建設的に進めている気がしてたんだけど、
去年の年末の第2波以降、停滞したり下がったりで、自分たちだけが、もがいたりしたところで状況は変わらない気がしてきた、っていうのが正直な感覚です。
Bunta(TOTALFAT) 以前は全体で起きてたじゃないですか。
ライヴ出来なくなる瞬間とかも。だけど、それがだんだん地方なら出来て、
都内だとNGみたいな当たりハズレみたいなのが生まれてきて、
SNS観ててもミュージシャンで「この人たちは演れてるけど、この人たちは演れないんだ」とか
そういう辻褄の合わないこともたくさん出てきて、
オレらの仲間同士の間でも認識のズレみたいなのが起こってくると、
みんなの気持ちも震わされるというか、ブレてる奴はもうさらにブレて辞めてっちゃうし、
そういうのが去年より強くなった印象がありますね。
Shun なんか一枚岩ではないかなっていうのは感じましたね。
バンドとかシーンとか、立場によって主義主張もズレてきたと思うし...
─── 考え方の基準もわからなくなってきた感じはしますよね
Shun まあ、そういう中であからさまに分断を目の当たりにしたり、肌で感じたりするとすごく嫌な気持ちになったりするし、
じゃあTOTALFATってどういう立ち位置ってなんだろう?どこがベストなんだろう?っていうのは今でも探しているし。
とはいえ、常にクリエイティヴでいることでバンドとしてオレたちの在りたい姿っていうのは保てると思っています。
Bunta 逆にこういう状況だからこそ、何か追い風があるとしたら、みんなツアーしてないじゃないですか。
だから今まで一緒にやったことない人たちと曲を作ったりとか、
そういうみんながなかなか動けない時期だからこそ、声を掛け合ったりして新しいことをやる、
協力するのがいいんじゃないかなあって思います。
Shun 時間があるっていうことはプラスに捉えてます。
─── Fire EX.は今、ライヴできているんですか?
Sam 台湾は2020年の第1波の時、日本でいうところの緊急事態宣言みたいなのが発令されてイベントがすべて中止になりましたが、
そのあと4、5月になったら感染者が何ヶ月にも渡ってゼロの状態が続き、
ようやくライヴもできるようになりました。
しかし、また2021年の同じ時期にクラスターが発生して、またやれない状態が続います。
ですが、台湾人は頑張ってルールを守っていたので今では1日あたり20人ぐらいまで押さえられている状況です。
なので、もうすぐライヴできる日がくると思っています。
あとワクチンも受けられる人は積極的に受けているので、状況は良くなっていくんじゃないかなと思います。
そして日本からワクチンを送っていただいたことに感謝しています。
日本の台湾に対する友情にはいつも感謝しています。
JC(FireEX.) ありがとう!
Sam TOTALFATのみなさんはワクチン受けたんですか?
Shun 今週、打ちますよ!
─── 最後に、Fire EX.のみなさんにお聞きします。次にTOTALFATに会ったら何がしたいですか?
ORio(FireEX.) すごく大きなハグをしたいです。
Sam 全力でライヴをやり切ってまた飲みに行きたいですね。
クレイジー打ち上げ!(日本語で)
KG(FireEX.) ぜんぜん会えてないですもんね、打ち上げ行きましょう!
ORio 会いたかったです!
JC 台湾はまだコロナの影響で一緒に集まることは禁止されていて、友達とご飯行くことも出来てないんですね。
日本に行ってじっくり話もしたいですね。
─── TOTALFATは彼らを連れていきたい店とかあるんですか?
Shun いや、超普通の居酒屋に(笑)
Bunta キャンプ!!
Fire EX. (全員):OK!OK!
結局、最終的に「とにかく飲みに行こう!!」というムード1色でしたが(笑)
コロナが落ち着くまでの辛抱ということで名残惜しくオンライン対談は終了しました。
終始おどけた感じでしたが、お互いのリスペクトは言葉の端々から感じ取られ、
これからも音楽だけでなく、いろんな意味において日本と台湾の架け橋の役割を担ってくれることでしょう。
YouTubeチャンネル「SAYULOG」では、2組のスペシャルトークを動画でお届け!
ぜひチェックしてください!
■ TOTALFAT
2000年結成、初ライブを敢行。
Jose(Vo/Gt)、Shun(Vo/Ba)、Bunta(Dr)からなるスリーピースバンド。
自他共に認める日本メロコア界きっての陽気でポジティブなキャラクター、通称”陽キャ”であると自負するメンバーの人間性から溢れる、
聴いた人全てを仲間に巻き込むパワフルでポジティブな楽曲を武器に、国内外問わず幅広い客層から多数の支持を得ている。
■ 滅火器(Fire EX.)
ボーカル・ギターのSam(楊大正)、ギターのORio(鄭宇辰)、ベースのJC(陳敬元)、ドラムのKG(柯志勛)からなる、
台湾南部・高雄出身の台湾パンクシーンを代表する4ピースバンド。
Hi-Standard、HUSKING BEEら日本のメロディックパンクのエッセンスをベースに、
台湾語を混ぜた詩情ある歌詞と激しいステージングで有名。
2020年12月には、バンド結成20年の節目に日本独自企画の記念アルバム『Unsung Heroes』をリリース。
台湾・日本のみならず、アメリカ、韓国、中国、シンガポールなど、海外でも積極的に活動している。
行 達也
株式会社SKIYAKI、 Our Favorite City 編集スタッフ
台湾インディーズは初心者ですが、夜市には行ったことあります。もっと食べたいです。