台湾インディーズのマルチな才能!林以樂

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2021/10/05 19:00

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台湾インディーズ。


日本でも同じ事が言えるのですが、メジャーとインディーズの垣根は低くなっているように感じます。

金曲奨(Golden Melody Award)でも、インディーズアーティストがノミネートされたり、賞を受賞したりすることもからも、その傾向は明らかです。


自分自身のバンドやプロジェクトの活動をしながら、人気アーティストに楽曲提供などをするアーティストもいます。

その代表的な人物のひとりが、今回ご紹介する林以樂(リン・イーラー)です。



さり気ないけれど細やかで美しい楽曲つくり


林以樂は、雀斑(Freckles)で主に作詞作曲を行い、ギター、ボーカル、キーボードを担当。

また、SKIP SKIP BEN BEN と言うソロ名義の活動、そして本名である林以樂など、複数の顔を持つアーティストです。

4人組バンド雀斑(Freckles)は、2003年に結成し、2008年に一度解散した後、2014年に再結成しています。


再結成後の2017年アルバム『不標準情人』にも、愛らしい歌声と、聴けば聴くほどに発見がある楽曲という、バンドの魅力がたっぷりと詰まっています。

例えば、同アルバム収録曲「愛的逃兵」は、スカのリズムの上に、ピアノの旋律が乗り、

前奏や間奏にロシア民謡の「黒い瞳」が、さり気なく入っているという二重、三重の仕掛けがあります。


「愛兵逃兵」



同じアルバムには、Leo王をフィーチャリングした「不標準情人」も収録しています。


「不標準情人 ft. Leo王」



洋楽も日本の音楽も台湾の音楽も取り込んで


林以樂の年齢は、公開はされていませんが、2003年からバンド活動をしていることを考えると30代半ばくらいであることは想像できます。

少し台湾の歴史の話になりますが、台湾は1987年まで戒厳令が敷かれ、日本を含めた外国の音楽を聴くことは出来ませんでした。

しかし、1970年代の後半以降生まれ、現在の40代前半より下の世代は、

最も音楽と出会う時期とされる思春期に入る前に戒厳令が解かれ、どの国の音楽でも自由に聴けるようになりました。

さらに、80年代に生まれは、ネイティブ感覚で、さまざまな音楽を自由に取り込める環境に身を置いています。


90年代に入ると、海外や日本のメジャーレーベルが台湾に支社をつくり、洋楽も日本の音楽も積極的にプロモーションされるようになります。

日本の音楽に関しては、台湾アーティストが楽曲をカヴァーして、その曲が人気になり、

更にオリジナルを歌う日本人アーティストも人気になり、台湾公演が大盛況になるということもありました。


70年代後半~80年代生まれが、ライブハウスで音楽を演奏するような年齢になるのが、2000年代。

彼らは、洋楽、日本の音楽、台湾の音楽と、幅広い音楽に影響を受け、それを昇華させた最初の世代とも言えます。

雀斑(Freckles)も、台湾インディーシーンで活躍する若手アーティストに影響を与えたバンドのひとつです。



「BABY BLUE (cover from フィッシュマンズ)」


林以樂は、日本の音楽も聴いていたそうです。

ライブでは、フィッシュマンズの「BABY BLUE」のカバーも披露。他にもJUDY AND MARYも聴いていたとのこと。

ちなみに、雀斑は”そばかす”という意味です。



溢れる才能は、作家としても発揮


2008年の雀斑(Freckles)解散後、林以樂はSKIP SKIP BEN BENというソロ名義での活動を始めます。

シューゲイザー色が濃い作品を数多く発表しています。

日本でのライブも行うほかにも、青葉市子との東アジアツアーなども経験しています。

2013年には、My Bloody Valentineの台北公演でのオープニングアクトも務めるなど、幅広い活躍をしています。

 

「鏡中鏡 Mirror in Mirror」

2015年リリースアルバム『鏡中鏡』から。表題曲「鏡中鏡」



また彼女は、自分自身で歌うだけではなく、楽曲の提供も行います。

シンガー・ソング・ライターであり、女優や執筆などでマルチに活躍し人気を博す、魏如萱(waa wei)にも作品を提供しています。


「海鷗先生我愛你 Mr. Seagull, I Love You」


ボサノバ調の楽曲に、魏如萱 waa weiの緩やかな歌声が、マッチしています。

また、彼女が今年リリースした最新アルバム『HAVE A NICE DAY』の1曲目を飾る「奶奶」(おばあちゃんの意味)の作曲にも林以樂が関わっています。


「奶奶」


歌い出しには、日本の童謡「桃太郎」が使われ、サビ部分でも日本語が出てきます。

魏如萱(waa wei)のおばあちゃんは、90歳代。

日本統治時代を生きた人なので、日本語も話し、「桃太郎」も歌っていたそうです。

日本と台湾の関係が見える作品でもあり、曲中に別の楽曲を入れ込む、林以樂の手法も光っています。

ちなみに、歌の最後に出てくるフレーズは、「姑娘十八一朵花」という楽曲で、台湾だけではなく、中華人民共和国でも親しまれている、1930年代に作られた曲です。



林以樂 名義でのプロジェクトが始動!


2019年から彼女は、本名名義でのソロプロジェクトを始動させました。

雀斑(Freckles)とも、SKIP SKIP BEN BENとも違う楽曲を次々に発表しています。


「L.O.T」


愛らしさと共に、これまでの音楽活動を経た成熟した雰囲気が漂う上質な作品が並びます。

なお、「L.O.T」は、アナログレコードでもリリースされています。

モノクロのジャケットが目を惹く、美しいデザインの作品です。



「PAROUSIA ~0.5mm~」


2021年4月にリリースした最新作では、台湾のネオソウルシーンで注目を集める雷撃(L8Ching /レイチン)とのコラボレーションをしています。



上質なポップスであり、ダンスミュージックの要素も持つ楽曲は、私たちに彼女の新たな側面を見せてくれます。

名義によって、制作する音楽の雰囲気が異なりますが、どの楽曲も、聴く人の心を楽しくさせます。


幅広い活躍を続けるアーティスト、林以樂。コロナ禍が終わり、早く日本でもライブをして欲しいと願うばかりです。

彼女の作品は、サブスクリプションの他、CDやアナログレコードなどのパッケージでも販売されていますので、ぜひチェックしてみてください。








石井由紀子(いしいゆきこ)

ラジオパーソナリティ、ナレーター。
無類の音楽好きで、国内外問わず様々な音楽を聴く。台湾人の友人と一緒に仕事をしたことを機に、台湾音楽の魅力に惹きこまれ、もっと深く知るために日々勉強中。ミュージックソムリエの資格を持つ。

 Twitter @YukikoIshii928



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